2007-04-24

四谷の昼

四谷には大きなオフィスビルというものがない。多くは数人、大きくても数十人規模の会社や事務所がひしめいている。正確には四谷と呼べるかどうか分からないが、最大のオフィスビルは防衛省だ。ここには数千人が働いている。出入りも相当多い。そんな人々が昼間一斉に這い出し食事に向かうと、小さな飲食店街はどこもいっぱいになってしまう。見附あたりで食事処が集中するのはみすじ通りで、多くは夜のお店なのだが昼のメニューも揃えているから皆がここにやってくる。日ごとに店を替え、腹を満たしている。

外堀通りからみすじ通りに入るとすぐに、洋食「エリーゼ」という小さな食堂がある。いつも列ができている。オムライスやハンバーグステーキといった定食のサンプルがショウケースに並んでいる。一年あまりも列が無くならないところをみると、きっと美味いに違いない。残念ながら未だに試したことがない。腕まくりしたネクタイ連中が前に並んだ客の後頭部を睨み付けているのを見ると、すぐに諦めてしまう。

通りの中程にSALSA CABANAというメキシカンの店がある。味にはそれほどインパクトがなかったけれど、三階建の屋上に設置されたガラス壁のペントハウスで食事ができる。天気のよい日など、エンチラーダをコロナで流し込むなんてのを昼間からやってしまいたくなる開放感が嬉しい。テキーラの種類も揃えているらしいが、それは遠慮した。先のほうにはGRIL CABANAというステーキハウスがオープンした。きっと姉妹店だろう。やっぱり儲かっていたんだな。

その対面あたりには信州生そば「政吉」という立ち食いの店がある。蕎麦がうまい。二つの大通りにも小諸蕎麦が二軒もある。そこいらの蕎麦屋より美味かったりする。値段も当然安い。要は四谷に美味い蕎麦屋が少ないということのだが、政吉は美味い。どうしてもという時には三丁目を越えてへぎ蕎麦の匠まで足を伸ばさなければならない。だから政吉は大事な蕎麦屋さんだ。

みすじ通りを終いまで行って、交差する道の向側にあるのが「俵屋」。普通の中華やさんだ。量がよい。定食メニューはどれも腹一杯になる。お得感がある。少し先には支那そばの「こうや」があるのだけれど、ここは美味いが濃いのでほんの希にしか行かない。火事の後には味も変わった気がする。

四谷はコーヒーショップも見逃せない。ドトールなんか三軒もある。うち二軒は新宿通をはさんで対面にある。少し手前にはサンマルクもある。二丁目まで行けばスタバもあるし、手前にはモリバコーヒーもできた。お気に入りは外堀通りのドトールだ。何と言っても二階からの景色がよい。窓外には一面外堀の緑が広がっている。ホットタイムが味わえる。

四谷の昼食時は短い。さっと盛り上がって、すっと終わる。みんな江戸っ子喰いだ。そんな中、我一人ドトールの二階に居座り時を貪っている。

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