2010-11-24

屋台のオジサン

去年は在った家が今年はもう無い。
屋台のオジサンは帰りがけに「どうもお疲れ様です」と言ってくれた。その夜俺は昔の仲間と会って酒を何杯か飲んで意味の分からない音楽に耳を傾けてきただけだ。その俺にオジサンはお疲れ様ですと言ってくれた。来年はこの場所にいるだろうか。

俺と入れ替わるように席に着いた年配の男性が「大将も一杯」と頼んだお酒を、オジサンは苦しそうに飲み干す。数百円の売上のためだものオジサンは歯を食いしばってそれを飲み干す。オジサンは来年もこの場所に立っていられるだろうか。

もう腕を通すことのなくなったダウンベストのことを思い出す。このオジサンにあのダウンベストをあげようか。寒い冬を乗り切ってもらうために、あのダウンベストをあげようか。果たしてそれがオジサンにとって有り難いことかどうかは分からない。けれども俺にはそれしか思いつかない。何のためか、本当にこのオジサンのためかは分からないけれど、俺にはそんなことしか思いつかない。

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