半月ほど前にある女が「クリムゾン」と口走ったのを思い出して、ロシアのダウンロードサイトにアクセスした。会いたかったのは「matte kudasai」
未だ大きかったウオークマンを膝に、ヘッドフォンで耳が痛くなるのもかまわず、巻き戻しと再生のボタンを交互に押しながら、この曲を聴き続けていた。LAから真っ直ぐ東へ延びるルート10は、そこが火星だと告げられれば信じるほかないほど岩と砂ばかりの景色が続き、目的の地は遙か彼方にあった。
名も知らぬ数件の集落でクオーターパウンダーを買い求め、朝焼けを一緒に頬張りながらまたこの曲を聴いた。パサパサの肉と薄まったコーラの味に、今を生きてる刺激を感じていた。
追いかけた彼女は緑の瞳に金色の髪をなびかせ、「彼が卒業したら一緒にドイツへ行くの」と言った。何も言えずに踵を返した。30時間ものバスの旅は、結局何処へも連れて行ってはくれなかった。それでも唯青春の旅を続ける他なかった。
四半世紀を経て再び耳にしたこの曲に、瞬時に時計が巻き戻った。くゆる紫煙にコーヒーのほろ苦さを覚えた。
「matte kudasai」
2 件のコメント:
その歌、聴いてみたくなりました。
いつかちゃんとアナログレコード環境整えてから、聴きたいです。
何かを待っていたら年をとっちゃうから、今やんなよ。今。
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